協会誌 vol.35-36より
国際天文学連合(IAU)が世界の全ての国々にまだ名前の付けられていない太陽系外惑星に命名するキャンペーン(2019)を行っていたのはご存知ですか。日本に命名を割り当てられた系外惑星系は、2010年に佐藤文衛さん(東京工業大学)が発見した星、かんむり座の方向410光年先にある恒星HD145457とその星を公転する惑星です。
IAUの100周年事業として「IAU100Years: UNDER ONE SKYひとつの空の下で」と世界に天文や星に興味を持つ事を通して、「すべての国が同じ空の下、同じ世界の一員だよ!」と呼びかけているのです。
そして恒星には「カムイ(Kamuy、アイヌの言葉で「霊的なエネルギーを持つ超自然的な存在」の意)」、惑星には「ちゅら(Chura、沖縄、琉球の言葉で「自然の美しさ」の意)」と名付けられました。
夜空を見上げていると、日常の雑念を忘れ、心がすっきりとします。地球から遠く離れた星を見ていると、心が解放され気持ちに余裕が生まれます。その昔、初めてハワイ島に行った時、星空のあまりの美しさに感動し、仕事の疲れが吹っ飛んだのを今でも鮮明に覚えています。真っ暗な中で星々が輝き、自然の音が静かに聞こえるだけの感動は東京に帰っても思い出していました。
その心地よい記憶は渋谷にあった五島プラネラリウムでのコンサートの企画制作に大いに役に立ちました。「スターライトヒーリング」と名付けたそのコンサートは話題を呼び、そこから10年(1995~2005)定期開催を行い、渋谷だけでなく、池袋、町田、九州の宗像でも、関係する企業と力を合わせ開催しました。空に広がる美しい星々を見ながら、自然音、音楽、ナレーション、香りを楽しみ、自然の中にいるような気分を感じて頂き「やすらぎと活力」を取り戻すことを意図したコンサートです。
視覚優位の社会、動きの早い画像、人と人が戦う映像があふれる社会だからこそ、夜空の星を見ながら、ゆっくりしたスライド映像を楽しむ時間は大切だと考えました。心理的不安の軽減や安心感が増えることが、番組の前と後で行った心理テスト(STAI)の実験によっても明らかになりました。
真っ暗な中での音楽や自然音そして一コマ一コマの自然の映像など、このコンサートの制作を通して様々な事に気付く事ができました。
それは
・安心した環境で視覚の情報を減らすと、聴覚や嗅覚など五感が研ぎすまされ、
感性に磨きがかかる。
・その経験を積み重ねると直観力が高まり、気づく力が高まる。
・自然音は主役ではなく、縁の下の力持ちとしての働きで、心の深いレベルに「快い」
記憶を残す。
・聴覚も視覚も単独で働いているのではなく、五感全体が連動して外部の情報を
処理している。
・音も香りも記憶とつながっている。
などなど、私の音を科学する視点や空間の中で音の風景をデザインする方法に気付きが沢山ありました。