協会誌 vol.30-31より

西洋も東洋も超えた哲学者

歴史、文学、宗教、美術などの領域を超えた広い視野で日本の文化を解き明かした哲学者の故・梅原猛さんは、専門化した学者ばかりが多くなる中でとても貴重な存在の方だったと言われています。従来の説にとらわれず、日本の歴史や文化を研究し、古代史や仏教史の新説を発表したことは、人の評価にとらわれず、ご自身の信念に基づき研究され続けたからこそだと思います。
そして「自然と調和しなければ人類の持続可能な社会は成り立たない」とし、人間を中心にした思考と自然を支配しようとする現代の文明や西洋哲学に疑問を呈し、今の文明が地球の災害を起こしているという視点には学ぶことが多々あると思います。地球規模での環境問題や自然災害が待った無しの今、梅原さんの志を組む必要があると感じている人も多くいるのではないかと考えます。

自然と共に生きる

私がサウンドヒーリングを始めたばかりの頃、梅原猛さんの講演をお聞きする機会があり「自分の心に何を響かせて生きていくのか」が大切だと感じたのを覚えています。そして数年後、都内のあるホテルで偶然ばったりと梅原さんと出会い、僭越にもお声をかけさせて頂いたところ、にこやかにお話し下さり、品格とあたたかさを感じるお人柄に感動したのを覚えています。これからの時代は「自然と共生し、自然の循環を大切にする」考えがなくてはならないという梅原猛先生のお言葉は今の私の仕事のあり方に影響を与えてくれたと感謝しています。

音の専門家

私の専門は音の分野ですが、音楽の分野には素晴らしい方々が沢山いるにもかかわらず、音に特化して音の力を人の内面性の向上や健康増進に活かそうとした時、その分野の先輩が少ないのには驚きました。そして音だけをやっていたのではだめで、常識にとらわれない自然観を持ち、人間、自然、歴史、宇宙、芸術、宗教、ヒーリング、健康の向こうにあるもの等々、音の領域を超え視野を広げて学ぶ必要があると思ったのでした。
サウンドヒーリング協会の中村会長、西條先生ほか理事の先生方、アドバイザリーの先生方のお陰で、それぞれの専門分野の視点から研究し学ぶ事が出来ているのは心から感謝あるのみです。

社会の中のお母さん役づくり

今の社会の中で専門家は沢山いますが、大きな心で人の心を優しくする、一緒にいるだけで安心する人はまだ少ないのではないかと思います。サウンドヒーリング協会が目指す人づくりは、音だけに専門化した人ではなく、家族のようなつながりを感じ、大きな愛と感謝の心で人を包み込み、「手と音」の力で体のケアをしてくれる社会における「お母さん役」です。お母さんは、一緒にいる人の変化に気付く「共感力」があります。お母さんは時にきびしく、しかし常に応援する立場にいてくれます。お母さんは一緒にいてくれるだけで安心します。心身の回復力を高めるのは人々の中にある自然の力ですが、お母さんがいる安心感に回復力が高まり、体や心の痛みも軽減します。
お母さん役は、男性の中にある女性性(優しさ、包容力)を引き出し、女性の中にある無償の愛と強さを引き出す事につながると思います。女性でも男性でもお母さん役を目指すことで自分を信頼し人間力を高める事になると思います。

小さな優しさに大きな愛を注ぐ

お母さんを見て子どもは真似をしたくなります。人から真似をされるような人は、人と人、人と自然のつながりを大切にし、感謝の心を持ち、自然体で生きている人だと思います。小さな優しさに大きな愛を惜しみなく注いでいる人だと思います。サウンドヒーリング協会の研修を通して、そんな人づくりを今年も日本と米国で行います。これまでも研修を受講され、生活にサウンドヒーリングの精神を活かしている人は、間違いなくご自身とご家族が以前より健康になったと聞きます。起きる問題にあまり動じなくなり、自分に自信を深めていると感じます。喜びが喜びを生む、連鎖反応が起き始めている人もいます。
人と対立せず、調和する心を発揮して、誇りを持って生きている人も増えつつあります。人を変えるのではなく、自分を変えて、音の力で社会に「やすらぎと活力」を広めている人も増えています。すべてはよくなると決めて行動している人はとても魅力的になっています。

無為にして成す

今年の巻頭言に投稿を頂いたダニエル・アカカJr.さんもサウンドヒーリングの精神を共にする大切なお一人です。交流を始めてちょうど20年になります。ハワイの日系2世John & Amy Tanakaさんご夫妻(※)がハワイ島マウナラニに住んでいたことから、アカカさんと交流すると「きっといい事がある」 とご紹介くださり、そこから機会をつくってはハワイ島に行き、サウンドヒーリングの精神と根幹がつながっている点を数多く発見してきました。(※John & Amy Tanakaさんご夫妻は天国に還られました)
アカカさんはいつも教えるとか指導するというスタンスではなく、お会いして会話をしていると自然とこちらが何か大切な事に気付かされ、別れた後もその内容をメモにして残すという、不思議と気づきを促される時間になります。アカカさんとお会いして感じるのは「無為にして成す」という大きな愛とやさしさです。またアカカさんと会話やメールのやり取りをしていつも感じるのは、言葉を慎重に選んでいる事です。肯定的な相手を思いやる言葉だけで会話やメールをし、相手(私)に心地よい余韻が残るのです。
「言葉には 聖なる力(マナ)が宿っている。自分が一度吐いた言葉は二度と取り戻すことはできない。言葉はポジティブにもネガティブにも働くことを知りましょう。」とアカカさんは言い、それをご自分でやって見せているのだと理解しました。
アカカさんはご自身が、作為せず、何か大きな力に導かれているという印象があります。そしてその大きな導きの背後にはアカカさんが常に、「感謝の心で自然に呼びかけ」、「肯定的な言葉」を発し、積極的な心で人生を切り拓き、人々の為に献身的に貢献され、大きな力とつながっているからこそだと思います。
このアカカさんの「自然に呼びかける」「肯定的な言葉」「無為」は私たちがサウンドヒーリングの精神を活かして、明るい未来を創造する上で、これからの時代において大切な要素だと思います。会うと「きっといい事がある」人になる近道かもしれません。

生命場に満ちるフォース

ダニエル・アカカJr.さんと梅原猛さんに共通する点は人間と自然のつながりを大切にして人類を自然界の頂点に置かず、自然や宇宙の一部をなしているという考え方です。そしてイエール大学医学部にて40年に渡り「生命場」の研究を続けたハロルド・サクソン・バー博士もそのお一人だと思います。バー博士は、宇宙は「法則」と「秩序」の場であるとし「この惑星の生命は宇宙と無関係なのではなくその一部なのであり、広大な空間の彼方から及ぶ抗しがたい宇宙の力に敏感に反応している。植物は地球外の力である太陽光に依存し、人間や動物を養っている。そして動物は互いに養いあっている。約1億5千万キロ彼方から来る、太陽光線なしではみな餓死してしまうことを思えば、われわれが偉大な宇宙の力に従属しているという事実もすんなり受け入れられるだろう※」と述べています。又「科学とは単に事実を集め宇宙の物理的構成要素を説明分類することではなく、構成要素間の関係を支配している法則またはフォース(力)を考察することなのである。銀河系から素粒子まで、つねに運動している宇宙の構成要素間の関係を定義づけるフォース(力)や法則や組織がもしなかったならば、それらは一瞬たりとも存在し得ないことがわかるだろう。※」と加えています。(※生命場の科学 ハロルド・サクソン・バー 著 新保圭志訳より)
生命現象を分子の化学反応にして説明する分子生物学など還元主義が主流の現代科学の中でバー博士の視点はとても重要だと私は思います。サウンドヒーリングの人に与える影響を「体の場に満ちる生命力(ライフフォース)」から見ると不思議な変化を読み解くことができると考えています。


ライフフォースという概念は面白いことに映画「スター・ウォーズ」に登場します。「フォースはわが強き味方、生命がそれを産み、はぐくむ。そのエネルギーはわれわれを取り巻き、われわれを結びつける。われわれは輝ける存在。身の周りのフォースを感じるのだ。※」と長老ヨーダがルーク・スカイウォーカーにジェダイの力の源泉である「フォース」について語っています。(※新保圭志訳) May the Force be with you フォースと共にあらんことを。

あらゆる生命の力(ライフフォース)にありがとう

現代を生きる私たち人間は、自分の事だけに心が奪われているのではないかと思います。自分がどう生きるかを考える前に、自分の中に眠っている自然の力に「ありがとう」と呼びかけ、その力を発揮することが大切だと考えています。私は13才の時、原因不明の病が当時の医療では治らず、自分の中に眠っている自然の力を発揮することを手当て法で学び、実践し病気が完治した経験から誰の中にも眠る自然の力に気付くことができました。
生命は自然界の力によって生まれ、空気や水や太陽の光を無償で与えられ、「生きている」というより「生かされている」事を意識し、自身の中の生命の力(ライフフォース)と自然界に大きな声でまた心の中で「ありがとう」と常に呼びかける事が、災害をも未然に小さくし、困難に打ち勝つ力を与えられると考えています。
私は今年、自分への思いを手放し、しっかりビジョンを持ち、花や木や森や海、太陽や月や星々にそして人々と自分の中に静かに存在する自然の力に常に「ありがとう」と呼びかける一年にしようと思います。
皆様もぜひ一緒にやってみませんか。そして自然と人、人と人をつなぐ新しい仕事を一緒に創造していきましょう。

協会誌vol.33-34

サウンドヒーリング協会の協会誌2022年版(vol.33-34)が発行されました。

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